イヴォン・シュイナードからのメッセージ
     The whole natural art
    of protection

私のカタログ処女版は、1972年パタゴニアの前身である 登山用具を扱うシュイナード・イクイップメント社のカタログです。細長い形で総数66ページ有り、表紙にはツーフー作の復刻版『詩句の魂の風景』を使いました。この頃、私は初めて環境問題に取り組んでおり、このカタログで初めて環境問題について協力を求める声明文を発表したのです。内容は登山家たちにプロテクト用のハーケンを一般的でなかったチョックに変えるよう求めたものでした。登山家たちに広く愛用されていたハーケンは、私たちの柔らかい指だけでなく、人気のある登山ルートのホールドを傷つけていました。チョックなら打ち込む必要もなく、取り外しが出来たからです。カタログでは顧客たちがハーケンをチョックに変える事への理解を促すためにクリーンクライミングの入門書であり、今では古典と称されるダグ・ロビンソン著「ザ・ホール・ナチュラル・アート・オブ・プロテクション」を紹介しました。
 スタイルに道徳観念を持つという会社の姿勢は、このときはっきり決まったのです。この姿勢は当時よりも今こそ、より意味があり、しっかり守らなければならなくなりました。 というのは,70年代以降には、アドベンチャー精神が薄れ、より環境破壊が進んだからです。今日、自然と共存するためには、今まで以上にライトでクリーンな自然へのアプローチが求められています。つまり、人間と自然との間にある「物」を最小限にとどめるということです。その理由は二つあります。まず、山、砂漠、森、海、川などに人が持ち込む物を少なくすればするほど、人は多くのことを自然から学ぶことができ、より自然の活力を得ることができるからです。次に、人が物や道具に頼るのではなく、出来るだけ自分たちの知識に頼るアプローチは、自然に優しく、害が少ないからです。物が製造され、出荷される。それぞれの過程で公害や汚染という副産物を生み、私たちの愛する場所を傷つけ、そして地球を傷つけています。

 2000年を迎え、美しい自然を守るために私たちに与えられた課題は何でしょうか。それは人が必要最小限の物を所有し、身につけると言うことです。さらに、環境に最も優しい素材と製造方法で作られた物を選ぶと言うことです。これからの衣服や道具は、多用途且つシンプルで、耐久性を備え、手入れが容易、軽量、かさばらない物でなければなりません。用途が限られた衣類や道具の所有は最小限にとどめることが必要です。長距離を走るサイクリストには、摩擦を少なくするためにセーム皮(羊などの柔らかい皮)を備えたサイクリングショーツが必要かもしれません。カヌーをする人にはネオプレーン(合成ゴム)のネックシールが必要かもしれません。釣りを楽しむ人にはフェルト底の靴が必要かもしれません。しかし、製品が特殊であればあるほど、厳しく自分に問いかけて下さい、その材料が環境に与える害に見合うほどの価値がある製品なのか。ライトでクリーンな自然へのアプローチをしている製品なのか。私たちが自然に浸ることの心地よさ、自然と戯れることの素晴らしさを忘れない限り、答えを誤ることはないでしょう。


             patagonia社主  イヴォン・シュイナード


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